9312_「ハニーストーン」のミニチュアハウス、Piece of Mindの仕事
暑さが続く 8月末の夕方、Piece of Mindの工房の近くまで来たので、久しぶりに加藤さんを訪ねました。すると「できたばかりです!」と、作業台の上には、イギリスのコッツウォルズ地方の住宅そのままの、ミニチュアハウスがありました。大屋根が美しいインナーガレージ付きの 2階建て、「これ、何だと思います?」と、こちらから質問する前に、加藤さんから尋ねられたのでした... 。
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加藤さんとは同い年で、大きく括れば同じ住まいづくりの仕事をしていますが、私とは対極的なデザインの加藤さんからは、学ぶことがたくさんです( 2020.08.29) hr.icon
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加藤さんの工房は、私の自宅と事務所の中間にあり、いつでも寄れる所にあるのですが、加藤さんの手を止めてしまうのが申し訳なく、あまり寄らないようにしていました。
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さてその翌々日、答えがわからなかった私は、その答えを知るべく、不思議なミニチュアハウスの設置工事の助っ人として、加藤さんの車に同乗し、依頼主さんのお宅に向かったのでした。
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何と、インナーガレージに入るのは、車ではなくエアコンの室外機でした。おそらくミニチュアハウスの間口が、このデザインの勘所なのでしょう、左右の隙間がないほど間口を広くしたとのこと、設置には思いのほか時間がかかりました(10分で終わると聞いていた... )。
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なるほど室外機は、美しい庭の前では無骨です。囲ってしまえばいいのでしょうが、それでは熱が籠もってしまう。そこでこのようなアイディアが、依頼主さんから提案されたそうです。室外機が半分隠れてしまえば、残りの半分は観賞する私の心が隠してくれるようでした。
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無事設置してみると、何がそう思わせるのかはわからないのですが、ずいぶんと前から、すでにそこにあったような、不思議な感覚を持ちました。これが第一印象でした。
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屋根のスレートや外壁の石材(ハチミツ色の石「ハニーストーン」というそうです)の細かい造形が、歴史を感じさせるので、そう思わせたのでしょうか。
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視点を遠くから近くに移動させていっても、細部の作り込みが破綻することはなく、
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ドアの上の照明や、取ってや丁番に到るまで、
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私はこのおとぎ話を、いつまでも楽しませてもらったのでした。
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そして、この依頼主さんのお住まいは、さらに大きなコッツウォルズ地方の住宅そのままの、ミニチュアハウスがありました。
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アーリントン・ロウに建つオリジナルは、14世紀に建てられた修道院の羊毛貯蔵所、その後 17世紀に職工のために、一連のコテージに改装された建物なのだそうです。
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私は鳥の視点で、空から地面からと、このコテージを眺めました。
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『遠くから建物に近づいていくにつれて、だんだんとその建物を理解していく』私が美しいと感じる建物は、そんな建物です。
「遠景」では建物全体のフォルム、大きく美しいひとつ屋根。「中景」では建物の表情、私はもっと建物に近寄りたくなります。
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そして「近景」では建物内部を示唆する、ここにはどんな人たちが暮らしているのだろう。そんな私の好奇心にいつまでも付き合ってくれる、素晴らしい作品でした。
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無事に設置を完了し、狭山への帰り道の車中、デザインの話というより、こんな話になりました。
「自分にアイディアや技術があって、どんなに頑張ったとしても、」
「依頼してくれる人がいなければ、それを実現することはできない。」
依頼主さんがいるからこそ、私たちはデザイナーだと名乗れるのだ。そんな話に、私も深く共感しました。
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